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サーバント・リーダーの事例

旭山動物園 小菅元園長にみるサーバント・リーダーシップの具体例


旭山動物園 小菅元園長

ペンギンが空を飛ぶという、あの有名な旭山動物園(※)は、小菅元園長のリーダーシップによって閉鎖寸前にあった動物園を再生し、今や上野動物園の入園者数を超えることもあり、ユニークな動物園として全国で注目されています。飼っている動物自体は珍しいものはいませんが、動物園としてのあるべき姿を追い求め、飼育係と一緒になって、アイデアを何とか生かせないかと試行錯誤の上、ようやく辿り着いた復活プロジェクトの成功にみるサーバント・リーダーシップです。

(※)日本で最北にある、旭川市 旭山動物園


小菅元園長の動物園のあるべき姿(ビジョン)は、動物園を単なる娯楽施設と考えず、4つの役割があると考えました。


  1. リクリエーションの場
  2. 教育の場
  3. 自然保護の場
  4. 調査・研究の場

であり、「動物園に関わるものとしての基本スタンス」を常に考えるようメンバーを指導しました。結果、30年続いたメンバーとの勉強会が、動物園存続の危機を救うアイデアの宝庫となり、そのいくつかを実現させることによって現在の成功へと至っています。


ここでは、旭山動物園の成功例をサーバント・リーダーの特徴に照らし合わせながら解説してみたいと思います。


①個人を尊重する(Diversity & Inclusion)

小菅元園長は、「地球上に生きる生物の命はみな平等だ、命に優劣はない」という基本理念に立ち、一緒に働く飼育係はもちろんのこと、飼育されている動物の立場を尊重し、動物園のビジョンを打ち出します。

特に、動物の立場で考えるという発想で、それぞれの行動体系、生態系にあった展示をしているため、動物自身、ストレスがかからない生活を楽しみ、飼育係も共に楽しみ、さらには来園者にもその動物の様子が楽しく、正の相乗効果を生み出したのです。


②導く(lead)

「日本一の動物園をつくりたい」という小菅元園長の強い思いから、「理想の動物園」についてメンバーと話し合いを始め、回を重ねるうちにメンバーの頭の中には「世界一の動物園」ができあがっていました。この理想の動物園の根底にあるのが、「動物園とは何をするところなのか」という動物園の存在意義であり、動物園に携わる者がこの共通認識を持ってアイデアを出すよう指導していきました。予算に限度ある中、飼育係によるワンポイントガイド、動物の様子や園内の近況を知らせる手書きのポップ、「夜の動物園」企画など低予算で実現できるアイデアを推進し、また資金確保の交渉では理想の動物園構想を真摯に伝え、ビジョンの実現へとメンバーを導いていきました。



③サポートする(serve)

動物園の存在意義を、小菅元園長とメンバーは下記のように定義しています。


「動物たちと一緒の楽しい時間を過ごし、その中で動物たちの素晴らしさを感じてもらい、それがきっかけとなって、【動物たちを保護したい】、あるいは【動物の生きる地球環境を守るためには、何をすべきなのか】などを考える意識を育てる。また、動物園は、【希少動物の保護・繁殖】に関わり、さらには、野生動物医学など、【学術研究の場】でもある。」


この基本に立って、顧客、職員、動物に対し貢献できるよう常に心がけ、さらに他の動物園や関連団体等への協力を通じ、献身的な活動をしています。


④人の持てる力を引き出す(empower)

小菅元園長は、動物にも人間にも自分らしさが発揮できるような場を与えることに重点をおきました。ペンギンには大好きな雪の上での散歩や水中での遊泳、握力の強いオランウータンには空中散歩、好奇心の強いアザラシには水中での人間との対面の場など、それぞれの個性を生かした環境設定により、見る者に感動を与えています。

また、職員の才能をより引き出す指導を実践し、人見知りの強い若い飼育係には理想の動物園創りに参加させ、上記にある「空飛ぶペンギン」や「オランウータンの空中散歩」などのアイデアを具現化できるようサポートしたり、絵の得意な職員にはその能力を発揮させ、メンバーである職員それぞれが持つ経験や個性から生み出される様々なアイデアを評価し、能力が発揮できる環境づくりに努めました。


⑤人の成長(develop)を促す

小菅元園長は、「飛びぬけたスターはいらない」というのを持論とし、個性を大切にしながらチームとして結果が出せるようメンバー教育をしました。特に、なかなか新しいことを考え付かないタイプや、近道をするのが上手でなく少しずつ前進していくタイプのメンバーがやる気をなくさず、少しずつ能力を上げていけるよう指導し、それをみて励まされる人もいれば、刺激を受けるベテラン職員もおり、個々の成長とともにチームとしての成長も促しています。また「失敗を恐れずチャレンジする気持ち」を、小菅元園長は大切にし、アイデアを考えたのに実行に移さないメンバーを叱り、失敗から学ぶ大切さを教え、真のプロフェッショナルへと育てていきました。


この様に、自らの理想の動物園とはというビジョンに基づき、人と動物への深い愛情をもち、一人ひとり(動物も含め)の価値を大切にするという小菅元園長のサーバント・リーダーシップは、動物園の成功物語と、素晴らしい組織文化の醸成に大きく寄与しているのです。


 引用・参考文献

角川書店 「旭山動物園」革命 小菅正夫 著

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