過去の活動報告

【開催報告】第10回近代の優れたリーダーに学ぶSL研究会~中村哲医師~(2020年1月30日)

開催日時:
2020年1月30日(月)19:00~21:00
場:
レアリゼアカデミー

2019年12月4日、アフガニスタンにおいて中村哲医師が何者かに殺害されました。
今回は 医者でありながら白衣を脱ぎ捨て 用水路建設や人道支援に自らを捧げきった中村哲医師を偲びつつ、その高潔な「生き方」から サーバントリーダーシップの本質やその要素について共に学び合うひと時を持ちました。

中村哲医師

中村氏は、1946年福岡県で生まれました。小さい時から論語の素読を続け、祖母からは「率先して弱い者をかばえ」と教えられ、父親からは「早く大きくなって、日本の役に立つ人間になれ」と、耳にタコができるほど聞かされながら育ちました。
西南学院中学時代に、内村鑑三の「後世への最大遺物」を読み大きな影響を受け、自分の将来を日本のために捧げる決心をしました。
その後医者を目指し九州大学医学部を卒業しました。

「人のやりたがらぬことをなせ。人の嫌がる所へゆけ」を生涯の指針とし、1984年にパキスタンのペシャワールミッション病院ハンセン病棟に赴任しました。
1991年には、アフガニスタン国内に最初の診療所をダラエヌール渓谷に開設しました。

2000年には、アフガニスタンを襲った大干ばつ対策のため井戸掘りを開始しました。
2003年からは砂漠化した農地復旧のため『緑の大地計画』を実施し、「100の診療所よりも1本の用水路を」という考えで用水路建設を開始しました。工事には日本の伝統工芸が多用され、用水路では蛇籠工、柳枝工、取水部では山田堰をモデルにした斜め堰が築造されました。
2010年には、マルワリード用水路は ガンベリ砂漠まで開通されました(約25Km)。
その後も用水路建設は続けられ、2019年には、16500ヘクタール(東京都中野区の面積の約10倍)の土地に緑が広がり、65万人がその恩恵を受けています。

アフガニスタンで一緒に働いた方々は、中村医師をどのように見ていたのか?につきましては、以下のようなコメントが上がってきました。

・戦国時代の武将のような人、後ろ姿で人を引っ張る人、言葉に嘘が無い人、すごい能力の持ち主。
・威張った姿や、誇らしげに語った姿を見たことがない。現地の人達に敬意を払っていた。
・自分の今の、生きている一つの指針を与えて下さった方。
・中村医師の活動、生き様、そのものが平和であった(相手の方を尊重し敬意を払っていた)。
・仁を持った義の人。裏表のない人。
・比類なき知性(ダ・ヴィンチ的天才)と、比類なき胆力が備わった人。
・非常にユーモアがあり茶目っ気もある人。

中村医師の「人間力」の要素を(拙者の)10の切り口でまとめてみますと、以下のようになります。

1.謙遜さ:謙虚な姿勢で現地の方々の言葉に耳を傾け、彼らから学び敬意を払っていた。
2.大義を抱く:自分の野心ではなく、「アフガニスタンの人のため」という利他的な動機で「緑の大地計画」を掲げ実現を目指す。
3.高潔さ・真摯さ:高い倫理観を持ち 言行が一致している。誠実にことにあたり裏表がない。
4.奉仕する・尽くす:他者の幸せのために、自分の最善を尽くす。自分の使命を見出している。
5.献身的・喜んで犠牲を払う:大義の実現のために、自らを喜んで差し出す。
6.任用する:他者の可能性を信じ、思い切って仕事を任せきる。後継者を養成する。
7.人を活かし元気づける:他者の強味を解き放ち、より高いレベルで活躍できるように励ます。
8.熱意・信念:「人は愛するに足り、まごころは信ずるに足る」の持論を持ち、情熱を傾ける。
9.胆力・決断力:リスクを冒しながらも、マルワリード用水路建設に挑戦し完成させる。
10.屈せずにやり抜く力:35年間アフガニスタンの人々の幸せと平和のために尽くし続ける。

参加者の皆様からは、以下のようなコメントをいただきました。

・中村哲医師の生涯に圧倒されました。リーダーには人間力が必要だとわかりました。
・中村さんの偉大さに感動しました。
・中村さんの生き方は素晴らしい。これを自分にどう落としていくかが課題。全体的に心が洗われ勇気が出てきました。
・サーバントリーダーシップがテクニックではなく、人間力であることが良く分かった。
・スキルを単純に学ぶのではなく、実践されたきた人の生き方から学ぶという体験ができた。
・中村医師の人となりや考え方などを、生い立ちから深く知ることが出来た。
・中村さんの生き方に圧倒された。これからは“ミニ中村”を目指したいと思いました。
・中村さんが、“裏表のない人”であったことが、人々がついてきたことの原動力であることが分かった。