過去の活動報告

第36回 読書会開催報告

開催日時:
2014年2月28日(金)19:00~21:00
場:
レアリゼアカデミー

今回から第7章「教会におけるサーバント・リーダーシップ」を読み出しました。
グリーンリーフはこの章の序文で
「私の宗教観はあまり神学を基盤としていない。
言いようのない神秘の前に、畏敬と驚嘆の念を抱いて立ち尽くすだけで満足なのだ。
神秘について何かを説明しなければという気にはならない。」
とこの章全体に及ぶ彼の視点を提供しています。
そして教会を「人間の宗教的関心が<組織>化されたもの」と大胆に定義して、その中で教会が「設立時の目的を果たすための最良の方法を見つけるのに苦心している」と今日的な問題を指摘し、「(教会)組織や、社会に対する組織の奉仕といった点にまで」論考していくと宣言しています。
会読は序文からグリーンリーフがフレンズ・ジャーナル誌(クェーカー教徒向けの月刊誌)に投稿した「二十世紀後半に、求道者となることについて」という論文に入ります。
グリーンリーフのこの論文は1970年前後に書かれています。
当時の米国は、60年代からの公民権運動、泥沼化したベトナム戦争、そして1973年のオイルショック・・・、繁栄の中に不安が広がり、若者を中心に既存社会への反発や離反に端を発したヒッピームーブメントや自己啓発が盛んになってきました。
アメリカ社会の中で多くの人が既存の組織とリーダーに失望し、迷っていることに対して教会が救いの道を示せないことに、グリーンリーフは強い警鐘をならしています。
序文と論文を通読して、参加者による議論に入りました。

 

・一読して感じたことは、フォローワーがリーダーを作るということ。
リーダーを極めることはフォローワーを極めること、と認識した。
・リーダーシップそのものも、これを求めることで得られる、逆に求めなければ得られない。
・預言者がリーダー、求道者がフォローワーという構図なのだろうか。
求道者が求めるものが何か、求めているものは正しいのか、といった評価が必要で、それが難しいと感じる。
社会に不足している「もの」に対して、人々から自然発生的に求めるという行為が起きるのではないか。

グリーンリーフはこの論文で、「人々が預言に耳を傾けてくれたとき、預言者は名声を得る」という逆説表現で、我々に対して真実のことばを求めること、雑多なものと真実を聞き分けることの重要性を示しています。
そして、「昔の預言には価値があるが、現在の預言と預言者には期待できない」という声を一蹴し、その時代、すなわち現代の預言が重要であると説いています。

 

・本論文は宗教に言及しているために読む前から解りづらいと思ってしまいがちだが、普遍的な原理を述べているように思う。
・教会には一人の司祭や牧師と多くの信者が対面しているイメージがある。
組織の中での上司対部下のような1対多の関係では、納得できない上司のことばでも周囲に流されて黙って受け入れてしてしまうことがある。
1対多の存在の中で、1対1の関係を作っていけることが重要だと思う。
・ファシリテーションやリーダーシップは他の人の創造性を引き出せるかどうかが成功の鍵という話を聞いた。
さらに、人の行動の裏には感情があり、その感情の裏にはニーズがあるという説明だった。
求道者が何かを求めるのもそこにニーズがあるから。
・さまざまな組織の中でニーズは一人一人異なり、矛盾することも多い。
リーダーはその中で方向を定める責務があり、寛容さと粘り強さが必要。
短絡な判断や行動では、ニーズを満たせない。
・一人一人のニーズが異なることは事実であるが、その背景にもニーズがある。
そうした真のニーズには全員に共通したものがあるのではないか。
たとえば、会社勤務者の中で、仕事よりもワークライフバランスが重要という人もいるが、そうした人も会社が良くなることをよしとする点では共通する。
・表面的な価値観は、人の成長度合いの違いによっても異なることがある。
曾野綾子は「人は幼いときは親や周囲に養って‘もらい’、成長すると他者にいろいろなものを‘与え’、老年になると周囲にやって‘もらう’ことばかり求めるようになる」という意味のことを言っている(注)。
周囲を理解する寛容さも「与えるもの」であり、リーダーに必要な資質であると思う。
(注)曾野綾子の著作「戒老録」などに述べられている。
・共感力が重要と思う。お互いのニーズを認め合う者が集うのがコミュニティー。
その底辺に流れるものに耳を傾け、共感から共通の動機づけをしていく、ほんとうの束ねる力がリーダーに求められるのだろう。
・何人もの職人から構成される組織での話。
技術向上を図り成果を出すという点で目標が一致し、一番腕の良い組織長の下で一枚岩と見えた職場だったが、あるとき、実は目指すものが人によりバラバラだということが分かって、組織の絆が一気に崩壊したことがある。
真のニーズはきちんと確認しないと怖い。
・組織の長が強引にではなく自然に周囲の力と意欲を引き出すことがサーバントリーダー。
例えば、リーダーの働きかけによってメンバーがあたかも自分で課題形成して、自分の意思で長時間働くこともいとわないような。
これは自分がなりたいリーダーの姿である。
・本当のニーズをつかみ、本当にやるべきことを見つけ、周囲の心に訴える。
そして自らが行動で示すこと、そうした姿勢に価値を見いだす。
過剰の時代の欠乏を見つけることができるか。
・内なる声に耳を傾け真実を見つけることが重要。
短い論文だが訴えることの意味は深い。
・一人で読んだ時とは異なる気づきがある。
他の人の話を注意深く聴き、利他の精神、他者のバリューすなわち多様性への共感、これを実現する寛容さと忍耐力をもったリーダーが求められる時代だと思う。
・先般、会社を定年退職した。
家族に「もう退職したのに、いまさらなぜ読書会に行くの」と尋ねられたが、今日、その解答を得た。
自分はサーバントリーダーを目指して、‘もらう’老年ではなく、‘与える’壮年であり続けたい。

 

リーダーの役割は「真実」を見つけること。
その真実は一人のリーダーが独善的に示すのではなく、周囲の人々が求めるものを、その奥底にあるニーズを理解して探し求め始めるものです。
そのためにリーダーには傾聴、共感、寛容の能力が求められるのでしょう。
会読に参加した我々も、ごくわずかながらグリーンリーフの深い思索の世界に近づけたのではないでしょうか。

次回の読書会は 3月28日(金) 19:00~21:00 レアリゼアカデミーで開催予定です。