過去の活動報告

第32回 読書会 開催報告

開催日時:
2013年10月29日(火)19:00~21:00
場:
レアリゼアカデミー

前回の読書会に引き続き、「第5章 教育におけるサーバントリーダーシップ」からディキンソンカレッジでの1974年の「一般教養と社会に出ること」と題する講演で、大学における一般教養(Liberal Arts)教育に関して行った提言の後半部分(p.309、7行目-p.316、9行目)を会読しました。

ちなみに現代の米国や日本では、大学が最終学歴、すなわち社会に出る前の最後の学校教育の場となるケースが多くなっています。米国の大学進学率は、1974年当時が約50%で、現在(2013年)は約70%。同様に日本では1974年が約30%、現在(2013年)は約50%の大学進学率となっています。
グリーンリーフは、講演の中で「仕事の世界とは非常に曖昧なもの」と社会人生活をとらえて、その曖昧さに対処するために体得すべき力を提示しました。
「学生が学ぶべきことは、「正しい質問をする」という高度な技術」
「必要に迫られたらすぐに洞察や発想を受け取れるように、認識する力」
「準備は整っているから、経験に飛びこめるという自信」
「必要なときには創造的な洞察力が現れてくるという自信」
「その時の答えは、実際の場で生まれたものだから正しいに決まっているという自信」
さらに、グリーンリーフは、これらを学ぶのには一般教養(Liberal Arts)の学習が最適と主張し、大学の一般教養プログラムが持つ潜在能力に期待し、その改革を訴えています。
この主張をめぐって参加者から活発な意見が出されました。

・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」をテレビで見て、大勢の学生を前にしながらも双方向、未来志向で進める大学講義に感銘したことがある。
米国のすべての大学の 講義が同様ではないかもしれないが、こうした姿勢を日本の大学に学んでもらいたい。
・若い人は即効の結果を求め、有名人の成功者を追い求めがち。多くの大学教員はそうした有名人とはかけ離れているが、学ぶべきものは多数持っている。
このことをどう理解させてギャップを埋めていくかが課題。
・グリーンリーフの言う「曖昧な社会」の中で、「正しい質問をする」つまり周囲とのコミュニケーション能力を高めることは、自分への自信も芽生えさせ、苦しいとばかり思う日常を楽しいものにすることも可能にする。
このことを大学生のみならず、若い社会人も知らないことが多い。
・大学で一般教養を学ぶことは、先人の知恵と経験に学んで自分の「引き出し」をたくさん作ること。
若いころに培った「引き出し」が年齢を重ねる中で空になっていく恐怖を感じることがある。
「引き出し」を多数持っていることで、逆に社会人になっても勉強する意欲を保てている。
・若い人が新たに事を覚えることは常にゼロからのスタート。
先人が到達したゴールをスタートラインにはできない。
地道に先人の成果を示していかないといけない。

 

グリーンリーフは、講演の中で学習プログラムについて提案を行っています。
具体的には「学生に現代社会に奉仕し、奉仕を受ける準備をさせるように学期ごとに目標を示し」「この目標に惹きつけられる学生と、参加する意思のある教職員による限定されたプログラム」を課外活動で実施することを示しました。(引用一部改編)
そして講演のまとめの段階で、グリーンリーフは大学における一般教養(Liberal Arts)
について、「それを学んでいる大学という環境が現実として、人生のどの段階とも変わらぬ現実であるとして受け止められる状況を生み出し、さらに大学での経験を実用的な実験期間
として用いることで、現代社会に奉仕し、奉仕を受けるような心構えを学生にさせる明確な努力生み出すもの」と、その理想像を整理しています。
最後まで読み通したメンバーによる意見交換はさらに熱を帯びてきました。

・最近の教育再生会議によるセンター試験改革案は、大学入学前の資格取得もポイントとするなど大学の就職予備校化に拍車をかける結果になりはしないかと懸念している。
・米国では、社会奉仕につながる課外活動、とくにこうした場でリーダーシップを発揮する
ことが大学入学資格の取得においても重視されている。
日本における個人の知識習得量がもっぱら重視される入試方法については再考の余地がある。
・学生に学習計画を立てさせると、本人の学習意欲が向上し、習得のレベルが変わってくる。
設定能力の向上も体得すべきこと。
また、内容に魅力がありながらも単位を与えないという講義には本当に学びたい人だけが集まってくるだろう。
・グリーンリーフの提言の中に「グループを作る」ということが挙げられているが、これは重要なポイントと思う。
相互のコミュニケーション能力の向上のために表現力の向上が重要であり、表現力の向上の中で自分を客観視して冷静に分析できることを学びたい。
コミュニケーション教育の中で演劇の技法を取り入れるケースも増えてきている。
・ワークショップ型の学習も効果があるだろう。意見交換の中でお互いの立ち位置を意識できる。
・Liberal Arts日本語で一般教養と呼ばれる教科は奥が深い。文芸や芸術といった分野の学習を進めると、この世の中にいろいろな価値観や立場があることが学べる。
つまりどこにあってもその人の存在に意義があることを知り、受け入れられるようになる。
グリーンリーフの主張は一般教養の学習を通じてサーバントリーダーシップを学ぶということと理解した。

 

議論の最後に、参加者からのこんな発言がありました。
・サーバントリーダーシップのコンセプトに最初に触れた時は、柔らかく優しいもの、という感想をもっていた。
2回にわたって講演録を読んで、グリーンリーフの力強い提言やサーバントリーダーシップの強靭な本質を垣間見て驚いている。
これからもサーバントリーダーシップの本質に迫っていきたい。

自らが能動的、積極的な姿勢を持ちながらも自己中心に陥らず、他者の価値と存在を認識できる。
グリーンリーフは一般教養の学習を通じてサーバントリーダーシップを学ぶことを強く訴えかけてきました。
われわれも彼の著作を通じて、サーバントリーダーシップを学び、求める旅を続けていきましょう。

次回は 11月29日(金) 19:00~21:00 レアリゼアカデミーで開催予定です。