過去の活動報告

第30回 読書会 開催報告

開催日時:
2013年8月23日(金) 19:00~21:00
場:
レアリゼアカデミー

今回の読書会は、「第5章 教育におけるサーバントリーダーシップ」に掲載された大学の理事とのやりとりの部分を読みました。(p.288-p.300、4行目)

グリーンリーフはチェスウィック大学の25人の理事に、「現代社会に奉仕し、また奉仕を受け、与えられた機会を使って成長できるような学生を訓練する」ことを目的とする新しい教育ブログラムの調査と作成に1,000万ドルの資金を提供するという提案を行いました。
新プログラムの作成について理事は大学の教職員や生徒に助言を求めることはできますが、教職員らへの全面委託や報酬の支払いを禁じる、すなわち理事が自らの責任で新しい教育プログラムを作ることなどが条件となっています。
このことに関する質疑応答や意見交換が発言録としてまとめられています。グリーンリーフと理事達とのやり取りを巡って参加者からもいろいろな意見が出されました。

・現在の日本の大学教育もグリーンリーフが提言した1970年頃の米国と変わらず、それぞれの学部の領域(経済学や物理工学など)の知識教育や技術教育が中心となっていて、未来を担う有為な人材づくりへの配慮が少ない。
・かつては企業側が社会人教育の重要な役割を担っていたが、企業に余裕がなくなり大企業においてもそうした機能が減退している。
・学生の姿勢も「成功への事前担保」を求めるものになっている。就職難のため企業の採用担当に評価される活動に傾きがちなのはある程度分かるが、自らの意思とチャレンジ精神が失われてしまっている。

 

こうした問題はこれまでも語られてきましたが、クリーンリーフと理事たちのやり取りから40年経った今も解決には至っていないようです。
グリーンリーフは大学進学率が上昇する中で、大学が人間づくりに配慮しないことは大きな社会問題である、と喝破しています。

グリーンリーフの提案とその切込みにもかかわらず、チェスウィック大学の理事たちは、与えられた課題を解決するのが大学経営のトラスティである理事、すなわち自らの責務であることが理解できないためか、グリーンリーフの提案の意図を疑い、それを問うばかりで話が前に進みません。

・日本の大学も同様の話が多いと思うが、一部で地元への貢献を目指した活動がある。
学生を地元企業にインターンに出すとともに人間教育を意識し地元への貢献、還元を求めている。
・ただし、この活動は大学の教員や理事によるものではなく、企業出身の大学職員によるものである。

グリーンリーフは本書の第3章「サーバントとしてのトラスティ」における主張と同様に、組織の信託を受けた者へのリーダーシップを強く求めています。
大学の教員が専門分野の研究や学内の人間関係にのみ注意を払う現状を憂いつつ、「理事に今回の申し出をする目的は、社会からの信頼を大学に築くための新しいリーダーシップを確立するため(文章一部改)」とその主張のボルテージはあがります。

・理事、すなわちトラスティがその任務において重要なことをなすには、まず周囲の話を静かに傾聴し、ひたすら目的に向かってぶれない、権威ある姿勢を保つ必要がある。

グリーンリーフの熱い思いに参加者も強い刺激と影響を受けた会でした。

次回は 9月30日(月) 19:00~21:00 レアリゼアカデミーで開催予定です。