過去の活動報告

サーバントリーダーシップ第一章読書会開催報告

開催日時:
2013年8月9日(金) 19:00~21:00
場:
レアリゼアカデミー

ロバート・K・グリーンリーフのServant Leadership(邦訳「サーバントリーダーシップ(金井壽宏監訳、金井真弓訳。英治出版2008年)」は、グリーンリーフの思想の集大成であり、サーバントリーダーシップの原典です。
その第1章はグリーンリーフがその考えをまとめた初の出版物である「The servant as Leader」(1969年刊行)を採用したものであり、サーバントリーダーシップの概念を包括的に述べたものです。
今回は12名の参加を得て、邦訳で70ページあまりの「サーバントリーダーシップ」第1章について説明とディスカッションによる通読を実施しました。

 

グリーンリーフは、冒頭でヘルマン・ヘッセの「東方巡礼」(注)を読んで、サーバントリーダーシップの概念を生むインスピレーションを得たと説明しています。
サーバントリーダーシップを生み出した重要な作品です。
1932年に書かれたこの作品は、旅の一座の従者レーオが実際はリーダーで、皆はそれをレーオが去った後に気がついたという内容です。
(注)サーバントリーダーシップ日本語版では、「東方巡礼」(高橋健二訳 新潮社)が参照されていますが、現在は、「東方への旅」(日本ヘルマン・ヘッセ友の会研究会訳、臨川書店。全集13に所収)で読めます。

・「東方巡礼」については「サーバントリーダーシップ」やその他の解説本に書かれているあらすじから童話的な話を想像するが、実際はきわめて難解で内容も深淵である。
・「20世紀は賢人が正義に基づいて世界を正しく導く」と考えられていたが、その信念は欧州大戦(第一次大戦)によりあっさりと壊された。
ヘッセに代表される20世紀前半の知識人は、そのことにいずれも苦悩していたと思われる。
・1932年はドイツでナチスが実権を握ろうとするときであり、再び暗黒の時代へと向かっていた。
社会の頂点に立つリーダーが世界を正義に導く者はではない、というヘッセの思索がグリーンリーフによってサーバントリーダーシップという形に作られたと思う。
・サーバントリーダーシップは、部下に対する配慮が重要といった表面的な話だけではなく、正義へ導く者のありかを探る使命をもった深く、重い課題でもある。

第1章は、東方巡礼を引いた導入を受けて、30近い節にわけてサーバントリーダーシップを説明しています。
読書会では各節の内容を確認しながら、ディスカッションを行っていきました。

・自分のかつての職場では数名の職員が多数のオペレータを管理していた。
業務の性質上、上からの指示という形がある一方、ピラミッド型の組織ヒエラルキーがないために、上位者の指示への反応はオペレータから見たリーダーシップの有無で左右されてしまう。
・リーダーシップは、決してきれいごとではない。
収益を上げることが義務付けられる中で組織をマネジメントして成果を出す。
成果は部下と気持ちを一つにするための地道な行為の積み重ねの結果である。

グリーンリーフはリーダーシップの第一歩として「傾聴」の重要性を唱えています。

・他人に対する心からの関心はなかなか持てない。傾聴は自分に余裕があってようやくできる。
・カウンセラーの教程でも傾聴のトレーニングはとても厳しい。傾聴は日常の中で自然にはできないので、意識し続けて習慣化する必要がある。

 

また傾聴を起点として「共感」、「受容」の重要性に論を展開していきます

・企業がどういう人を受け入れるのか、その幅は社風などの組織文化によってかなり異なる。
・組織の中では異端を排除しても、つぎの異端が生み出されるだけである
・仕事の能力よりも組織目標に共感してもらえるかどうかが重要、共感は相互の問題。

そうした姿勢から「気づき」「予見」の力が生み出され、導く方向を示すことができると展開されていきます。

・医師の世界では患者一人ずつを相手にする臨床とは別に基礎的な医学研究がある。
後者は直接聞こえない患者の声を聞き、新しい世界を切り開いて、直接目に見えない世界中の患者を助ける役割を持っている。
・グリーンリーフは、歴史上の人物をサーバントリーダーとして挙げているが、その一人のトマス・ジェファーソンについては、やや違和感がある。
彼の事跡を確認してみたい。

グリーンリーフは第1章の中でサーバントリーダーの原則を示しながら、サーバントリーダーシップの本質を徐々に解明していきます。それらはラリー・C・スピアーズによりサーバントリーダーの10の原則として整理されています。
こうして定義されたサーバントリーダーシップに関連して、グリーンリーフは「生まれながらの真のサーバントだけがまず耳を傾けることに寄って問題に対処する」とも述べています。

・「サーバントリーダーは生まれながら」と言っているが先天的資質を持たないとリーダーにはなれないのだろうか。
・一方で、資質を持たない者も長く過酷な訓練でサーバントに近づける可能性があるとも述べている。
大変厳しい話だが、サーバントリーダーを目指す具体的な行動指針を考えたい。

サーバントリーダーシップの基本概念を改めて読み、討議することで、新たな気づきと課題を認識した読書会でした。
この成果が各自のリーダーシップ養成に生かされるとともに、今後の読書会での学習と討議にもつなげていきたいと思います。

次回は通常の読書会を8月23日(金)19:00~21:00にレアリゼアカデミーで開催致します。詳細はこのサイトの「活動に参加する」の「第30回読書会」をご参照下さい。