過去の活動報告

第27回 読書会 開催報告

開催日時:
2013年5月10日(金)19:00~21:00
場:
レアリゼアカデミー
今回は、第4章「企業におけるサーバント・リーダーシップ」の最後の節となる「社会的方針を生み出すビジネス・リーダー」(261ページから267ページ)を読みました。
これは、グリーンリーフが1974年にある企業から「積極的に社内に奉仕する組織とはどういうものか」との問いを受け、これに対する回答、提案として書いたものです。まず、読書会メンバーで1974年という時代について確認しました。
前年1973年のオイルショックは日本にもまた本書の舞台である米国にも大きな影響を与え、また米国ではベトナム戦争の敗色が濃くなった時代(翌1975年にサイゴン陥落)です。
経済的利益の増大が社会の幸福につながることへの懐疑が生じつつも、企業の行動規範はまだ変化していない時代ではなかったかという見解が表明されました。

本節でのグリーンリーフの提言は「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」の概念に直結するもので、この提言の先進性について、読書会での「CSRという考え方は、わずか10年前の日本においてもにも全く一般的ではなかった」との意見に象徴されています。

読書会ではこの意見を機に、参加者それぞれの所属企業での体験やさまざまな見聞に基づいて、CSRについて活発に議論がかわされました。
「不祥事をきっかけに経営者がCSRを認識することが多い」との発言に対して、「経営者が企業のミッションやCSRを重要と感じていても、仕事が細分化され多忙な現場はそれを実感できないことがある」という意見がいくつか出てきました。
これを巡る意見交換の中で、企業の日常活動が社会でどう役立っているかを自社従業員に積極的に紹介している例が挙げられたところ、参加者から同様の活動に取り組んでいるとの報告があり、現場での地道な取り組みの有効性や重要性を認識したという意見が多数出てきました。

グリーンリーフはこの提言での中で、CSRの取組みについて詳細かつ具体的に述べています。
現場従業員を含む調査委員会の組成、企業の事務所がある各国(提言の相手が多国籍企業と思われる)の事情に基づいた調査、専門のコンサルタントの協力を得た分析などです。

CSRへの取り組みが単に流行に乗った活動ではなく、企業の統治機構やカルチャーの変革を伴うものであるという事実は、この概念が一般的となった今日でもきわめて重い課題であるとの認識させられた読書会でした。

次回は第5章「教育におけるサーバント・リーダーシップ」に入ります。
6月14日(金) 19:00~21:00 レアリゼアカデミーで開催予定。

【ご案内】
本読書会はロバート・K・グリーンリーフ著、金井壽宏監訳、金井真弓訳「サーバントリーダーシップ」(英治出版、2008年)を毎回、5~10ページ程度読み進める会です。
本書はグリーンリーフの考えが各所にちりばめられており、読書会のいずれの回もその箇所でのグリーンリーフの記述をもとに自由な討議を行っています。
これまでに参加されていなかった方や途中の回が抜けてしまった方も自由に質問や意見交換ができますので、遠慮せずにご参加下さい。